公開集中セミナー

おいしさの科学フロンティア:「食感性工学」公開集中セミナー

「食感性工学のパラダイムと実用技術・システムへの展開」

コーディネーター・講師:東京大学大学院・教授 相良泰行

主催:東京大学 大学院農学生命科学研究科 農学国際専攻 国際情報農学研究室
協賛:東京大学大学院農学生命科学研究科アグリコクーン、(独)農研機構 食品総合研究所、(社)日本食品科学工学会、日本食品工学会、(社)日本冷凍空調学会、(社)日本食品機械工業会、食品化学新聞社
日時:平成20年12月10日(水)~12日(金)〈3日間〉9:30~17:00
場所:東京大学農学部弥生講堂(アクセス)
参加費:社会人 7,000円、
協賛団体・協賛学会々員6,000円、
学生無料
懇親会:表記連日17:00-19:00 於弥生講堂(会費: 3,000円)
申込み方法:国際情報農学研究室ホームページから参加登録/振込票をダウンロードして、E-mailまたはFAXにて申込み下さい
申込み締切日:平成20年12月1日(月)
<開催の趣旨>
 前世紀の産業はおしなべて「大量効率生産方式」により利潤を追求してきた。しかし、前世紀末に至り、これらの方式の追求に伴って資源、エネルギおよび地球温暖化などのグローバルな問題が顕在化し、人の健康・生存ひいては生命をも脅かす問題として深刻な社会不安を招く事態となってきた。このため、これらの問題は、政策面でも、科学技術の面でも、緊急に解決すべき課題としてクローズアップされてきた。農業・食品産業の分野でも、連日、各種メディアに「食害」、「高齢化」、「企業倫理」などのキーワードが氾濫する状況となり、消費者に安全・安心で「おいしい食」を届ける新しい科学技術と産業の創生が必要となってきた。
 コーディネーターの相良教授は、消費者の「食にまつわる感性の分析」を起点とした「食感性工学」を提唱し、「食とヒトの相互作用」に関する定量的情報を基盤としたフードシステムの再構築に貢献する科学技術、つまり川下から川上に向けた新食材生産・商品の開発や製造プロセスの最適化手法、さらには社会システムや国際共同研究プロジェクトを実現するためのパラダイムと方法論を展開してきた。このセミナーは食感性工学の約10年間にわたる研究成果を集大成して系統的に提供することにある。また、「招待講演」では、食品工学のオーソリティーとして著名なカリフォルニア大学デイビス校のR. Paul Singh教授が最近チャレンジしている「食品の胃内消化機構シミュレーターの開発」、すなわち、ヒトと食の相互作用に関する工学的アプローチや「有人宇宙探査のためのフードシステム設計プロジェクト」の進展状況について紹介する。
 本セミナーでは食感性工学のパラダイムを用いて、「高齢化社会のケア食・食育社会システム」、「ランドマーク食品企業創生のための研究開発システム」、「インドネシアにおけるバイオ燃料生産プロジェクト」などへ展開した事例を紹介する。また、サイエンスの面では、静脈注射嗅覚刺激による脳磁場計測法により得られた脳内情報伝達機序の解明に関する研究成果などを紹介する。さらに、実用技術開発の面では「おいしさの五感コミュニケーションモデル」をコアモデルとして提唱し、このモデルと新しく開発した計測システム「極低温マイクロスライサ分光画像処理システム」などをベースにして、凍結乾燥操作の最適化、機能性食素材とおいしさを調和させる品質設計法、商品情報コミュニケーション効果の評価に基づくマーケティング手法、食品企業における実用的感性官能評価法、高齢者用冷凍米飯の最適保蔵条件探索法、嚥下食素材の物性計測法の標準化、緑茶・コーヒー飲料・和風ドレッシング製品などの香味設計と製造プロセスの最適化など、主に民間企業との共同研究により得られた成果を紹介する。
 (備考) プログラムに所属・氏名が併記されていないテーマについては全て相良教授が担当する。
<プログラム>
(第1日)12月10日(水)
メインテーマ:食感性工学のパラダイムと展望
9:30-9:45
開会の挨拶
(東京大学大学院農学生命科学研究科・教授 相良 泰行)
9:45-10:15
食感性工学への期待
((独)農研機構 食品総合研究所・所長 林 徹)
10:15-11:00
消費者の「おいしさ」を起点とした新しい科学技術創生の経緯
~食感性工学のパラダイムと主な研究領域~
11:00-11:45
【招待講演】Gastric Digestion of Foods-Challenges to Food-Consumer Interaction Engineering-(食品の胃内消化~食品と消費者の相互作用工学への挑戦~)
Distinguished Prof. R. Paul Singh, University of California, Davis
13:00-14:45
食感性モデリング:おいしさの五感コミュニケーションモデル
~緑茶飲料ヒット商品の香味設計とマーケティング戦略~
15:00-16:15
高齢者用冷凍米飯の粘弾性・官能評価に基づく最適保蔵温度条件の探索法およびケア食宅配・食育社会システムの提唱
16:15-16:45
ランドマーク食品企業創生のための研究・開発プロジェクト方式の提唱
(第2日)12月11日(木)
メインテーマ:おいしさの感性計測・評価システム 
9:30-10:00
脳波・脳磁場計測による味覚・嗅覚の脳内情報処理機序の解明
10:00-10:30
コア技術の開発 ~ハイパースペクトルイメージングの原理と応用~
((独)農研機構 食品総合研究所 蔦 瑞樹)
10:30-11:45
極低温マイクロスライサ分光イメージングシステムの開発 ~生体・食品サンプル内部構造・氷結晶・成分分布の3次元精密計測システムの開発と応用~
13:00-14:00
視覚・味覚・嗅覚センサ ~青果物選別および味と香りの識別システム~
(香りセンサーと官能評価法 プライムテック(株) 吉田 浩一)
14:00-14:45
機能性とおいしさの調和設計法 ~胡麻風味・和風ドレッシングの開発~
(味の素(株) 池田 岳郎)
15:00-15:45
テクスチャ感性計測法 ~複雑系菓子パン・ケア食素材を対象にして~
(デニッシュペストリーの粘弾性計測法 大学院博士課程 柴田 真理朗)
15:45-16:45
食品企業における実用的官能評価法
(元味の素(株) 上田 玲子)
((第3日)12月12日(金)
メインテーマ:新領域と国際共同研究への展開
9:30-10:30
Designing Food Systems for Manned Space Explorations(有人宇宙探査のためのフードシステム設計)
Prof. R. Paul Singh
10:30-11:45
食品凍結乾燥技術の進歩 ~卵スープ生産プラント設計・操作への応用
13:00-13:30
GC/O分析によるコーヒーアロマ保持のための凍結乾燥温度条件の最適化
13:30-14:00
コーヒー飲料製品(カフェラテ)の香味とパッケージの調和設計法 (大学院修士課程 道下 知美)
14:15-14:45
ジャカルタ市青果物卸売市場の再整備計画プロジェクトの成果報告 (東大大学院講師 荒木 徹也)
15:00-16:00
インドネシアにおけるバイオディーゼル燃料生産プロジェクトへの展開 ((独)農研機構 食品総合研究所・東京大学連携教授 鍋谷 浩志)
16:00-16:45
総合討論:司会 相良泰行