アグリコクーン ACTワークショップシリーズ(ACT10) 国際シンポジウム

「不確実性をどう伝えるか:
遺伝子組換え作物とコミュニケーション

日時:平成18年11月8日(水)13時30分~17時
場所:東京大学農学部2号館2階化学1番講義室
◆参加無料/事前登録制
主催:アグリコクーン 食の安全・安心フォーラムグループ
協賛:日本農芸化学会
後援:トヨタ財団
協力:シュトゥットガルト大学環境技術社会学科
企画協力:リテラジャパン(株式会社リテラシー)
アグリコクーンACT10シンポジウム参加ご希望の皆さまへ、至急のご連絡とお詫び
 このたびは、シンポジウム「不確実性をどう伝えるか:遺伝子組換え作物とコミュニケーション」へのご参加登録を有難うございます。
 さて、急なことですが、出演予定だったシュトゥットガルト大学のレン教授が、病気のため来日できなくなりました。過去の手術のあとが一時的に悪化して飛行機での長距離移動が難しいとのことです。
 レン教授からは、発表用パワーポイントファイルをすでに預かっておりますので、対応としましては、レン教授の直前にご講演予定の西澤真理子先生に、レン先生のファイルの内容の解説までを行っていただき、さらにできれば、レン教授にも直接ビデオ中継もしくは電話中継を通じて会に参加して頂けないか検討しているところです。
 予定の大幅変更をお詫び申し上げますとともに、以上の事情をご理解頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。
◆変更後の予定プログラム:
総合司会 妹尾啓史(東京大学大学院農学生命科学研究科)
13:30-13:35開会の辞
機構長・研究科長 會田勝美(東京大学大学院農学生命科学研究科)
13:35-13:50遺伝子組換え作物と社会に関する問題点整理
正木春彦(東京大学大学院農学生命科学研究科)
13:50-14:10遺伝子組換え作物に対する自治体の規制の現状
佐々義子(NPO法人「くらしとバイオプラザ21」)
14:10-14:30不確実性をめぐるリスク・コミュニケーションの課題
西澤真理子(リテラジャパン)
14:30-15:00EUでのGM作物の受容とコミュニケーション
オートウィン・レン(シュトゥットガルト大学)
代理説明:西澤真理子(シュトゥットガルト大学、リテラジャパン)
~休憩~
(可能であれば、ここでビデオによるメッセージ:オートウィン・レン)
15:30-16:15食をめぐるリスク分析とリスク・コミュニケーション
吉倉廣(厚生労働省食品安全部参与/コーデックス委員会、バイオテクノロジー応用食品特別部会議長)
16:15-16:55ディスカッション
モデレーション:正木春彦・西澤真理子
16:55-17:00まとめと閉会の辞
副機構長 妹尾啓史(東京大学大学院農学生命科学研究科)

開催主旨

 EUは1998年から実質上の遺伝子組換え作物の流通のモラトリアム(停止)を行っていたが、2004年秋にはモラトリアムを解除した。それに伴い、EUで一旦は減っていた栽培実験や商業栽培の数も徐々に増加している。現在栽培されている主な品種はコーンで、2005年にはEU全体で55,000ヘクターでGMコーンが栽培されている。内訳は、スペインで飼料用のコーンが53,000ヘクターで商業栽培され、残りはドイツ、ポルトガル、フランス、チェコでの主に小規模の試験栽培である。またドイツに限ると、2006年の試験栽培は25件で、141件の商業栽培も行われている。
 さて、EUはモラトリアム解除の際に、表示と栽培に関する新たなEC指令を出すことで、GM種のEU内での栽培を認める一方、消費者の懸念に対応するため、GM種の流通の強化を行った。また、加盟国各国では市民との対話も行われるようになってきている。
 ドイツでのGM種の栽培については当該のEC指令と2005年に改正されたドイツ国内法であるGenTGが管理している。しかし、ドイツの政権交代に伴い、GM栽培規制条項における交雑の際のGM生産者責務について、法改正を含む広い社会議論が行われており、大変興味深い状況となっている。
 この度、EC委員会の食品政策、とりわけリスク・コミュニケーション研究の第一人者である、ドイツ・シュトゥットガルト大学のレン教授の来日が決まり、アグリコクーンのワークショップとしてシンポジウムを開催します。レン教授には、欧州、特にドイツを中心とする国々でのGM種の栽培状況、法的対応や市民との対話について、最新の情報を組み込んだ講演をお願いしました。日本では欧州での遺伝子組換え作物の栽培状況については情報が少ないので、今回、欧州での経験を共有し、社会との対話・対応への理解を深める議論を進めたいと思います。また、国際的な食品の安全と衛生規格を決める組織、コーデックス委員会の元副議長で、現在バイオテクノロジー応用食品特別部会議長の吉倉廣先生には、食の安全をめぐる国内外の議論を踏まえ、リスク分析とリスク・コミュニケーションとの関係、そして規制の副作用についても問題提起を頂く予定です。会の終わりにはパネルディスカッションを行います。

タイムテーブル

都合により一部スケジュールが変更になりました。
アグリコクーンACT10シンポジウム参加ご希望の皆さまへ、至急のご連絡とお詫び をご参照下さい。2006/11/2

参加対象

東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部の学生。新聞、テレビ、雑誌などの報道関係者。企業関係者といったキーパーソンを中心に広くリスク・コミュニケーションに関心のある一般。教育関係者等。

お問合せ

内容に関して:
東京大学大学院農学生命科学研究科 正木春彦
申込に関して:
アグリコクーン 産学官民連携室

講演者紹介

◆オートウィン・レン (Professor Ortwin Renn)
1980年にケルン大学にて社会心理学の博士号。米クラーク大学技術環境研究所助教授、スイス高等技術研究所(ETH)環境部上級研究員を経、シュトゥットガルト大学環境社会学科教授、現在に至る。
これまで欧州の技術アセスメントやリスク・コミュニケーションの実践研究の分野で第一人者として活躍している。2003年までは、公的機関、シュトゥットガルトの技術アセスメントセンター・バーデン・ヴュルテンブルク所長を兼任。欧州科学アカデミー会員、ベルリンブランデンブルク科学アカデミー会員として、学術分野での貢献も高い。また、ドイツ連邦政府地球環境変化諮問委員会委員、バーデン・ヴュルテンブルク州将来予測委員会委員なども歴任し、リスク管理について政府機関への助言も行ってきた。
食品関係では、現在EFSA(欧州食品安全委員会)リスク・コミュニケーション部会委員であり、また、現在行われている食品関連のEC委員会委託研究プロジェクトには、Safe Foodプロジェクトがある。また、ドイツではドイツ文部科学省の助成を受け、組換え作物についてのインターネットダイアローグプロジェクトも現在並行して行っている。バイオテクノロジー意識調査、「ユーロバロメーター意識調査」のドイツ地域の調査担当管理者でもある。
リスクマネジメント全般については、2000年にはOECDより研究助成を受け「システミックリスク研究」を行った。研究結果は2007年にロンドンの環境専門書出版社Earthscan社より出版される予定である。また化学物質については、2002年には欧州委員会より、化学物質の管理と予防原則の適用についての研究委託(プリコープリ研究)を受けた。
なお2002年からは、欧州での活動が評価され、米国科学アカデミー(NAS)のリスク・コミュニケーションに関わる諮問委員会委員として活動している。また、リスク・コミュニケーションと研究のNPOディアロギック代表でもある。レン氏の研究の詳細はホームページhttp://www.dialogik-expert.de/をご参照ください。
◆吉倉 廣(厚生労働省食品安全部参与/コーデックス委員会、バイオテクノロジー応用食品特別部会議長)
東京大学医学部教授(細菌学)、国立感染症研究所所長、FAO/WHO合同食品規格計画 (Joint FAO/WHO Food Standards Programme)のコーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission)の副議長を経て、現職。薬事・食品衛生審議会食品 衛生分科会長なども歴任。
◆正木 春彦(東京大学院農学生命科学研究科・農学部 応用生命工学専攻教授)
1999年より現職。農学部では分子生物学と環境倫理学を担当。また、高校生・一般向けの公開科学講座として、日本生化学会関東支部教育シンポジウム『遠くて近い、小さくておおきな微生物の世界』を主催するなど、これまで理科教育の改善にも活躍。関連の共編書には、松田良一・正木春彦『日本の理科教育があぶない』学会センター(2003)、松田良一・正木春彦『危機に立つ日本の理数教育』明石書店(2005)がある。
◆佐々 義子(NPO法人「くらしとバイオプラザ21」主任研究員)
「NPO法人くらしとバイオプラザ21」主任研究員。東京農工大学工学部物質生物工学研究科修士課程修了。筑波大学生命環境科学研究科後期博士課程2年。ホームページによる情報提供、取材活動、親子実験教室の企画・運営、学生フォーラムの企画など、くらしとバイオテクノロジーを切り口にしたコミュニケーションの場つくりに従事。去年からバイオテクノロジーに特化したバイオカフェを全国で開催。大学院では、市民の視点で、バイオテクノロジーをめぐるコミュニケーションのあり方について研究。著書に『バイオテクノロジー総覧』(共著:通産資料出版会)がある。
◆西澤 真理子(シュトゥットガルト大学環境社会学科研究員、ディアロギック研究員、Kenichi Ohmae Graduate School of Businessティーチングスタッフ、リテラジャパン代表)
製品安全認証機関勤務を経て、ロンドン大学インペリアルカレッジ(Imperial College of Science, Technology and Medicine)サイエンスコミュニケーション学科博士号(PhD, DIC)。ドイツ学術交流会研究員、テクノロジーアセスメントセンターバーデンヴュルテンブルク、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団研究員、シュトゥットガルト大学環境技術学科研究プロジェクトリーダー(PI)を経て、現職。
これまで10年、欧州で科学技術コミュニケーション研究に携わってきた。リスク管理、コミュニケーションについての関係論文はこれまで80本以上。講演もアメリカ、ドイツを中心とするヨーロッパ、日本でも多数ある。ドイツを始め、イギリス、スイス各国との共同研究、OECD、EC委員会、欧州環境省などよりの委託研究、国際シンポジウム開催などにも長年携わってきた。
遺伝子組換え作物の最近の研究実績については、科学技術振興機構の公募助成(代表 独立行政法人 防災科学技術研究所 池田三郎氏)の共同研究者として、そしてトヨタ財団からの助成で、日本の各機関からのご参加を頂き、遺伝子組換え作物のリスク・コミュニケーター養成のための実践研究を行っている。
なお、環境・食品安全・医療分野のリスク・マネジメントの研究とコンサルテーションを専門とするシンクタンク:リテラジャパン(株式会社リテラシー)は2006年2月に横浜に設立された。現在シュトゥットガルト大学環境技術社会学科との環境、食品安全分野でのリスクマネジメントおよびコミュニケーションの共同研究を継続して行っている。国内では化学物質管理分野において産業技術総合研究所委託研究などを受けており、他にも複数の国内外大手企業の助成を受け、医療・労働災害分野などでの社会科学的視点より研究を行っており、テーマは、医療とリスク認知など多岐にわたる。