塩類土壌での農業問題の解決を目指した植物細胞生理学

塩類土壌での農業問題の解決を目指した植物細胞生理学

FG6の第3回セミナーを開催します。今回は、オーストラリアの農業上最大の課題である乾燥ストレス・耐塩ストレスに対し、電気生理学・分子生理学を起点として塩害フィールドでの作物の応答まで視野にいれた研究を展開しているお二人にご講演をいただきたいと思います。
講師:
  • Roles of root aquaporins under drought and salinity
    Prof. Steve Tyerman(ARC Centre of Excellence in Plant Energy Biology, University of Adelaide, Australia)
  • Halophytes: an untapped resource to improve salinity stress tolerance in crops
    Prof. Sergey Shabala(School of Land and Food, University of Tasmania, Australia)
座長:
  • 堀江智明(信州大学:ナトリウム輸送研究者)
  • 事前登録不要/参加費なし

日時:2017年2月15日(水)13:00~15:00
場所:東京大学弥生キャンパス
農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
アクセス:
campus map

主催:東京大学大学院農学生命科学研究科アグリコクーン農における放射線影響FG(act109)
問合先: RI 田野井慶太朗 uktanoi[at]mail.ecc.u-tokyo.ac.jp (ext.27882)
要旨:
Dr. Steve Tyermanは、耐塩性研究におけるパッチクランプを始めとする電気生理解析の先駆者であり、かつ後に水チャネルの機能と作物の耐塩性との関係についての研究も進めるなど、25年以上にわたり植物の耐塩性機構の研究に取り組んで来られました。現在はPlant Energy Biologyという産官学連携の大きなファンディングを指揮していらっしゃいます。今回は、水チャネルとして広く認識されている分子が、水ばかりではなくナトリウムを含む陽イオンを非選択的に通す可能性を示唆する最新のデータなどご紹介くださいます。
Dr. Sergey Shabalaは、根や葉などの組織を試料として、非破壊的にイオンの流入・流出を測定するMIFEとよばれる独自の手法を開発し、作物のイオン輸送の機序を解き明かす先駆的研究をされています。今回は、近年精力的に進められている好塩生植物の耐性システムを解析された結果も踏まえ作物の耐塩性には、実はナトリウム排除と同等、もしくはそれ以上に細胞質内のカリウム保持が重要である可能性を示唆する最新のデータをご紹介くださる予定です。
お二人の講演内容はともに耐塩性ということで、FG6が取り扱う放射性セシウム汚染ではありませんが、セシウム、カリウム、ナトリウムが同じ1価の陽イオンとして存在する、という類似性の他、農業現場の問題点・課題を解くためにどのような研究が必要であるか、また乾燥地でのコムギ・オオムギ生産が重要産業であるオーストラリアにおいて、基礎科学を元々の専門とされるお二人が、農業現場の課題をどのように研究題材として取り組んできたか、基礎科学と実学をどのように両立してきたか、大変参考になるものと思っております。 興味ある方のご参加をお待ちしております。